2019/11/13

シカゴ日記 - 10日目

Lucky Plush Productionsというシカゴ拠点のダンスカンパニーのクラスを受けるため、朝からExtentions Dance Centerというスタジオへ。カンパニークラスといっても団員だけでなく一般のダンサーも参加することができる。初めて来る場所でこういうクラスの情報を得るのはなかなか難しいと思うのだけど、この日はエリンがゲスト講師だったので誘ってもらい参加することができた。鏡とバーのある大きなダンススタジオ。こういう場所でテクニックのクラスを受けるのはかなり久しぶり。ロンドンのバレエ学校での日々を思い起こさせる。エリンのクラスは最初から最後まで基本ずっと動きっぱなしで身体が一気にあたたまる。シカゴに来てからというもの寒さでずっと身体が縮こまっているような気がしていたので、やっと取り戻したような。神戸でもこういったダンスクラスを定期的に受けられる場所があればいいのに(むしろ自分でやるか?)と思ったけど、このレベルとスピードで進むクラスを開くのはなかなか難しいかなあ・・・。『SEARCH PARTY』のオリジナルメンバーであるマリアとディーもクラスに参加していて、初めましてのご挨拶。ここでこうして会えたことが嬉しかったし、彼女たちもとても喜んでいた。新長田では、来日しなかった彼女たちのパートを私たち日本勢が踊ったのだけど実際のところはそのことについてどう思っていたんだろう?ここ数年私は舞台作品の再演やリクリエイションにたくさん参加してきたけれど、やっぱり初演時のダンサーのこと、自分が踊るそのパートをかつてゼロからつくりあげた人たちのことがいつだって気になる。作品は永遠に作家のものだけど、その作品を踊るダンサーは代替可能な存在。ほんとうに?

という問いに明確な答えがないのはわかっているけれど。



2019年11月6日

2019/11/09

シカゴ日記 - 9日目

ワークショップの日。のはずだった。会場はIndian Boundary Parkという大きな公園の中にある建物。公民館というか、文化センターというような感じの場所。ここでパフォーマンスが行われることもあるらしい。会場まで行ったものの、ちょっとしたトラブルがあり今日のワークショップは結局キャンセルになった。私はこのことについてもっと怒ってもよかったとこのブログを書きながら今になっては思う。ここ数年を振り返ってみても、私はすっかり怒り方を忘れてしまったのかもしれない。腹が立つ、というような感情自体ももっと若かった頃に比べると湧き上がりにくくなったしその場限りで誰の助けも借りずどうにか収まりを迎えることができる。これは怒りに限った話ではない。自分を取り巻くいろいろな物事に対して揺さぶられること自体が少なくなっていて、そしてそれは危ういことなのではないかということにも私は気がついている。昔はもっと声をあげて泣いていたし、声をあげて怒っていた。自分の気持ちを表すための態度をわりと大きくハッキリと意識的に形作っていたように思う。でもそれはたぶん今の私の身体には合わなくなってきて、だから身体は忘れることを選んだのかもしれない。態度、をつくること。今の自分に合った態度を新しくつくり直すことについて考えてみようかな。



2019年11月5日

2019/11/08

シカゴ日記 - 8日目

先月ダンスボックスで滞在制作を行ったエリン、アリッサ、ケイトリンと会う日。エリンの作品『SEARCH PARTY』には私もダンサーとして出演した。スタジオAでの稽古後、リンクスの前でエリンの迎えを待っているとアヤコさんがやってきた。今日はコンスタレーション(リンクスと共同運営している音楽スタジオ)でライブがあって、アヤコさんの旦那さんが出演されるとか。知らなかった。少しだけ立ち話をした後、エリンがでかい車に乗って登場。窓を開けて「ヘーイ!!!!」と叫んでいる。気温3度とかなのにノースリーブとミニスカ。その姿があまりにもかっこよすぎたのと、親しい顔に会えたことで思わず涙が出そうになってしまった。エリンはシカゴに戻ってきてからとても忙しい日々を過ごしているようで、普段は車に乗らないけれど仕事のためにレンタカーを借りているとのこと。シカゴって結構田舎っぽいなあとこの1週間滞在して思っていたけれど、車を降りるとなんかちょっとイケてる感じの場所。めっちゃオシャレだけどカジュアルな雰囲気のレストランでタコスとカクテルを頼んで喋り倒していたらふわふわの可愛いコートを着たアリッサがやってきた。ああ嬉しい。




ご飯を済ませたあと、The Empty Bottleというライブハウスへ。私が生まれた1992年にオープンしたんだとか。ここでケイトリンと合流。へそ出しルック。エリンの友達のパンクロックバンドの演奏を最前列で見る。ボーカルが8ヶ月の妊婦さんで、おっきいお腹を抱えてパワフルに歌う。めちゃくちゃかっこよかった!
Malortという名前のシカゴのお酒をショットで何回か飲んだ。シカゴスタイルの乾杯(グラス打って、テーブルに叩きつけて、飲む)!焼いたグレープフルーツみたいな味がした。
帰りはエリンと、ライブハウスでたまたま会ったエリンのルームメイトさんと一緒に帰った。ルームメイトさんはパペットを扱うアーティストで、山海塾の話をしたような気がするけれどあんまりよく覚えていない。とにかく楽しい夜だった。




2019年11月4日

2019/11/07

シカゴ日記 - 7日目

シカゴに来て1週間。毎日19時ごろ眠気がきて、我慢して遅くにベッドに入っても朝4〜5時頃には必ず目が覚める。日本との時差は15時間で、時差ボケというには変な感じ。たぶんこちらに来てからは常に気を張っていたりすることもあり、身体の感覚がいろいろぐちゃぐちゃになっているような。今日はオフにしようと決めたので二度寝したあと洗濯をして、好きなアイドルの動向を追いかける。私はここ数年韓国のアイドルにハマっているのだけど、K-POP界では日々新しいことが起きるので情報を追いかけるのがもう大変。おまけに最近韓国のオーディション番組『PRODUCE 101』の日本版が始まって、最初は全然興味な〜いなんて思っていたのにどんなもんかと1話見てみたらバチバチにハマってしまった・・・。お気に入りの練習生がデビューできるように毎日頑張って投票しています!今日も彼らの努力と友情に涙を流す。

夜はステファニー、ジェイスン、ジェイスンのお友達と一緒にHoney Pot Performanceというプロジェクトグループの『Ways of Knowing』という作品を観た。知識は本から学ぶべきものか、それとも先祖や自らの経験から得るものであるか?というような問いから始まるパフォーマンス。度重なるワークショップ、長いリサーチ期間を経て育てられた作品とのこと。ダンスと映像を使った1時間くらいのパフォーマンスを見たあと、観客はステージ上に運ばれたテーブルと椅子に招かれ、ともに暖かいスープとサングリアを飲む。これはとっても美味しかった。食事の間には、パフォーマンスのテーマと繋がる質問がいくつか書かれた紙が配られ、他の観客とそれについて話し合う。正直この質問というのが結構難しくて、わりとセンシティブな、個人的なことについて聞かれている内容だったこともあり話があまり進まず、私含め周りにいた人たちはざっくりと意見し合ったあとすぐに関係ない雑談を始めてしまった。私はこの食事のあとまたパフォーマンスが始まるもんだと思っていたけれど(なんというか流れ的に?)、そんなこともなく各自解散のアナウンスがあって、終了。正直な感想を言えば、食事を始める前のパフォーマンス自体にあまり魅力を感じることができなかった。ステファニーと感想を話しながら帰ったけれど、彼女は黒人女性についてパフォーマンス中に語られた内容が興味深かったと言っていた。「ジェイスンも日本に滞在していたときは黒人男性であることを忘れて自由な自分でいられた、というようなことを話してたんだけど」と。正直未だに黒人差別があるということに日常生活の中ではなかなか気付くことができない。なぜなら私が黒人でなくアジア人だから。ということもその理由のひとつであるはず。もう10年以上前、ロンドンの郊外に住んでいた頃、私がアジア人であるということを理由に傷つけようとしてきた人たちの顔は今でもよく思い出せる。名前も知らない通りすがりの人間の顔を。当時の私はとても若くて、それにいちいち傷ついていたというよりはただ不思議に思っていたような気がするけれど、そのときの気持ちはあんまり思い出すことができない。彼らの顔以上には。そういえばシカゴに来てからはアジア人をあまり見かけない。ダウンタウンへ行けば多いのだろうか?




2019年11月3日

シカゴ日記 - 6日目

昨年ダンスボックスにレジデンスしていたジェイスンからのお誘いで、Chicago Dancemakers Forumの集まりへ。誰にでも開かれている会ではなく、インビテーションがなければ参加出来ないとのこと。会場はシカゴ現代美術館の中にあるEdlis Neeson Theaterという大きな劇場。今日のプログラムはシカゴを拠点に活動するダンサーと振付家のための集まりで、参加者はそれぞれ新しい作品のためのアイデアや、ちょっとしたパフォーマンスをワークインプログレス的に発表して意見交換をする。朝の10時から15時頃まで昼食を挟んで行われた。私は内容をよく知らずに誘われるがままフラっと飛び込んだので何の用意もせず参加してしまったけれど、自分の作品の映像とか持って行けばよかったなぁと少し後悔。ダンスボックスでも数年前に『ダンサー・振付家お見合い』だったか?名前を忘れてしまったけれど似たような会を開催したのを記憶している。個人的にはこういう場が定期的に開かれているのは良いなと思う反面、関西で今こういうようなことやって来る人いるんかなぁなんて漠然と思ったりもした。今日のフォーラムも予定されていた参加者のキャンセルが相次いだり、人を集めるのが大変みたいだったけれど・・・。
Chicago Dancemakers Forumは他にもラボ・アーティスト・プログラムという活動を行っていて、これに選ばれたアーティストは15,000ドルの助成金とメンターによるサポートを受けることができるとか。




フォーラム終了後、せっかくなので現代美術館を見てから帰ることに。Mika Rottenbergというアーティストの映像作品とインスタレーションが面白かった。主に女性の労働をテーマにした作品をつくっている人らしい。特に中国の養殖真珠とプラスチック製品を扱った映像はリアルとフィクションが織り混ざって見応えがあり、長かったけれど最初から最後まで全然飽きなかった。

美術館を出たあと一旦家に帰り、Uberに乗ってChicago Asian American Jazz Festivalへ。Uberのライドシェア(相乗り)を初めて使ってみた。日本でもこういったサービスあるのかな?普段タクシーに乗る機会が滅多にないので分からない。Trio WAZ(ラジオインタビューに一緒に出演した青木先生がコントラバス担当)とPurple Gumsというコンテンポラリージャズバンドの対バン。楽しかった!




2019年11月2日

シカゴ日記 - 5日目

スタジオBにて稽古。一昨日、ワークインプログレスのショーを見ておいて良かったなと思う。どのように場を使うかイメージを持ちやすくなった。私が参加するフェスティバルはショーケースの形態なのですべて自分のやりたいようにはなかなか出来ないだろうなと思いつつも、その形態、枠組みをふにゃふにゃにしちゃいたいな〜などと考える。用意された枠にピッタリはまる作品もかっこいいけれど、私の興味はそこにはあんまりない。ていうかそういう作品をつくる能力は残念ながら私には備わっていない(ということにやっとこさ気付けたことで『フリーウェイ・ダンス』が生まれたと思っている)。
シカゴに来て5日目、未だ振付を手に入れられていないので動きをつくってそれを磨くという作業がかなわない。自分の身体のための稽古をする。私の言う「スタジオでの稽古」は即興的に動き続けることを指す。歩くことから始まって、「歩き」という動きの連続をほどいて生まれた新しい動きに繋げて編み直す。そうして身体は動き続けることができる。




2019年11月1日

2019/11/02

シカゴ日記 - 4日目

雪だ。今日はハロウィン。 朝9時にポールさんの車でノースイースタン・イリノイ大学へ。Bridge Dance Festivalの宣伝のため、ラジオに出ることに。大学の建物内に放送局がある。ポールさん、リカさん、そしてAsian Improv aRts Midwestの青木先生と一緒に出演。シカゴではラジオで公演の宣伝をするのが普通なのかと聞いたらそんなことはないらしい。





緊張したけど、みなさんに助けてもらいながらなんとか無事に終わった。Bridge Dance Festivalは日本にルーツを持つアーティストが出演する企画なので、日本人としてのアイデンティティだったり、伝統的な踊りや音楽のことについて質問された。好きな曲を一曲流せると言われたので、Lizzoの「Good As Hell」をリクエスト。先週まで新長田に滞在していたエリンが作品の中で使っていた曲。
ラジオの放送が終わってから、近くのレストランでポールさんと2人で遅めの朝ごはん(早めの昼ごはん?)。ハラミ肉のタコスを食べた。付け合わせでスイートポテトのフライを頼んで、これが大当たりだった。普通のポテトはいつも途中で飽きて残してしまう。そういやアヤカは何歳なの?と唐突に聞かれ、27歳だよ〜と答える。昨日の上演前、オペ室でテクニカルのスタッフにあれがアヤカだよと教えたら「15歳くらいに見えるんだけど?リンクスはあんな若い子をアメリカまで連れてきてどうするつもり?」と言われたらしい。

午後はダウンタウンの方へ行ってみようと思っていたのだけど、雪があまりにすごいので諦めることにした。それなら、とポールさんからのお誘いでNational Museum of Mexican Artに連れて行ってもらうことに。ポールさんは昔ここで働いていて、なんと奥様と出会った場所でもあるという。職場のみんなに内緒で付き合っていたらしい。ミュージアムへ向かう車内でポールさんの昔の話を聞く。大学で映画を学び、ミクストメディア的な作品をつくってリンクスで発表していたと。まさに昨日の3番目の作品みたいなことをやってたと言うので、私は3番目のが一番好きだったと伝えると意外だったようで驚いていた。ポールさんの作品見てみたいな。





ミュージアムでは、ちょうど死者の日にまつわる展示を行っていた。最近私はメキシコの死者の日に興味を持っていて、というのも3月に上演した『フリーウェイ・ダンス』を振り返ったときそれと繋がる部分が多いように感じるからなのだけど、やっぱり何かが、近いなと展示を見て改めて思った。死者の日について知っている情報はとても少ないのに、近いと感じるのはなぜだろう?いつかちゃんと時間をつくって勉強したい。ていうかメキシコ行きたい。ポールさんと一緒にいると、シカゴのことよりメキシコのことに詳しくなっていっている感覚がある。私はそれをおもしろいと思うし、ポールさんがメキシコにルーツを持っていて、それを私に教えたいと思っていることも全て繋がっているような気がしてくる。というようなことを書くと、創作中は何でもかんでも繋がっているように感じるもんだけどそうでもないんだよ?と私を宥める人の顔がいくつか思い浮かぶ・・・。ミュージアムのショップにはプロレスマスクが置いてあったり、可愛いお土産がたくさん溢れていていろいろ買い物をしてしまった。あそこにあったもの全て買い占めたいくらい。ポールさんはハートの形をした吊るすタイプの飾り(正式名称がわからない)を買っていた。ハートのモチーフのものを集めていて、左腕にもハートのタトゥーが入っていると教えてくれた。なんでハートにこだわっているのかは聞かなかった。




最後に、ミュージアムの中で一番おもしろいと思った作品をYouTubeで見つけたので載せておきます。Rubén Ortiz-Torresというメキシコ人作家の『Garden of Earthly Delights』(2007)。映像内に出てくるカスタムされたトラクターの実物が人工芝の上に置かれていて、その背後でこの映像が流れている、という作品。

2019年10月31日

2019/11/01

シカゴ日記 - 3日目

雨が降っている。昨日よりさらに寒くて、天気予報では明日から雪が降るらしい。なんてこった・・・。寒いのが本当に苦手なので結構しんどい。朝なかなかベッドから出ることができない。今日はバスの乗り換えがスムーズにできた。





スタジオBを借りて稽古した後、外に出て早めの夕食をとる。19時過ぎにリンクスへ戻り、Co-MISSIONプログラムのワークインプログレスのショーケースを見た。このプログラムの参加者はリンクスのスタジオで制作をし、メンターによるアドバイスを受けながら作品を育てていく。制作費も出る。今夜の出演者はそれぞれルーツも作風も異なる4名。シンプルに身体ひとつで踊り込むものもあれば、映像やものを使ったパフォーマンスも。観客はバーで買った飲み物を持ち込んでカジュアルな雰囲気。当日パンフやチラシなどはなく、ステファニーさんの挨拶から始まり、キーシャちゃんが各作品の簡単な説明を口頭で。Bridge Dance Festivalで共演するアヤコさんがお子さんと一緒にいらしていて、ご挨拶。シカゴに暮らして15年ほどになるらしい。このあたりの小劇場事情を聞くと、いろいろありながらもやはりダンスを見るならリンクスかなー、と仰っていた。
マギーさんも来ていて、車に乗せてもらって一緒に帰ることに。どの作品が好きだった?と聞かれ、たぶんマギーさんは1番目のが好きだろうな・・・と思いながらも正直に3番目ですと答える。私は1番目のが良かったわと予想通りの答えが返ってきてやっぱりなと思う。マギーさんのダンサー時代のお話も聞き、グラハムについて少しだけ話す。車を降りたあと、私の部屋の入り口は離れにあるのだけど、そこまで一緒に歩いて送ってくださった。マギーさんの車はシートに暖房がついていて暖かかった。




ポールさんがインスタに投稿したセルフィー(撮り直しバージョン)。

2018年10月30日