2016/12/07

2016年12月5日

来年か、再来年か、もっと先か、時期は分からずともいつかやってくるであろうそのチャンスを逃すまいと、奮い立った。「アヤカに、あれを踊ってもらおうと思っていたんですよ」とつい先日言われたからである。彼女は私にダンスを植えた。植え付けてしまった。こうなったらもう、あとは水をやって肥料を与えて気持ちの良い光を浴びさせる他ない。そして、その役目を背負うのは紛れもなく私自身だ。黒沢美香が、旅立った。いま、痛みから解放されたあの小さな体を想うとふと息が漏れる。私はいつでも、美香さんに褒められたかった。たぶん、みんな美香さんに褒められたかったのだと思う。こんなに人に褒められたいと思うことは初めてのことで、だからこそ美香さんとの現場では絶対に媚を売らないダンスをしようと心に決めていた。彼女は私のことを「生意気」と呼んだ。そう呼ばれるのがとても好きだった。いつか自分にソロを振り付けてもらおうと、苦手な貯金も始めてみた。もちろんお金だけの問題ではないだろうが、いよいよ告白したときに蓄えが全然なくて・・・なんてことにならないように。ただ、先月神戸にいらした美香さんの姿を見て、これは、もしかしたら、もしかすると、お金も技量もなんにもすっからかんだけれど、出世払いとか、どうにかこうにか策を見つけて一刻も早く告白しなければならないかもしれない。そんなことが頭によぎった矢先のことだった。いつか、ありえたかもしれないそのダンスを、私は永遠に踊ることができなくなってしまった。美香さん、こんな時まで自分の踊りのことを考えてしまう私を、どうか叱ってやってください。どうか。