2016/01/26

2016年1月26日

ロンドンに住んでいた時にバイトして買ったマーチンの8ホールのブーツを売った。たいした額にはならなかったが、大事にしすぎてあまり履くこともなかったので後悔はない。ただ、自分でもよくわからない何かをひとつ清算したような気分ではある。17歳だった。泣きながら踊っていた。ダンスが嫌いなの?と聞かれて、そうだとはっきり答えた日のことは今でも覚えている。契約とは不思議なもので、来年の夏までは踊りを続けていなければならないらしい。明日自分の身体がどんな姿形をしているかもわからないのに、そんな他人の「踊り」なんていう不確定なものと契りを結ぶなんて、と思った。でも同時に、そういうことが自分の踊りへの自信に繋がるし、ダンサーとしてのプライドにも拍車をかける。昨日チラシを配っている最中、見知らぬ女の人に差し出した手をぎゅっと握られた。もっと長く感じたけれど実際には5秒くらいか、黙って強く握られたまま放してくれなくて、驚いて声が出せなかった。人通りは結構あったけれどその流れを止めることなく、私の前を通り過ぎるまでの間の出来事だった。あまりにも自然すぎた。最後の1秒あたりで、このまま殺されるかもとさえ思った。逆ギレしたおばあちゃんにチラシを顔面に投げつけられたり、酔っ払いに肩を抱かれたり、おじさんに握手を求められたりといったことはこれまであったけれど、それらは全て流れやリズムに不自然な行為で、だからこそ反応できた。自然であることが一番怖い。