2016/06/02

2016年6月1日

ひと月くらい前、友人の舞台を観に行った。「自分」を殺さずに舞台に立っている姿ばかりに目がいって、作品としてはよく分からなかったし好みではなかった。だけど、なぜだかその姿がとてつもなく羨ましかったし、愛おしかった。こんな風に人を見ることができるのだ、とそれは初めての体験だったように思う。20歳の時にはじめて賞をもらった。「誰でもない誰かとして存在していたところがよかった」というようなことを審査員のひとりに言われた。たくさん褒めてもらったけど、他になにを言われたかあまり覚えてない。あぁ、私のダンスに、ようやく気づいてくれた人がいた。ただそう思って、嬉しさをかみしめた。その日からはもう、私が私として舞台に立つことは一切なくなった。嘘をついているわけじゃなくて、でも本当のことを全部見せてあげるつもりもなくて、私は誰のためでも誰かとしてでもなく、その作品やダンスの生まれようとするその場所にとても自然に、振付られる存在として立とうとしている。どちらがいいとか悪いとかの話ではなくて、でもその褒めてもらったときの踊りというのは、先日観た友人が振り付けた作品に出ていたときのものだったので、やっぱり踊りはおもしろいナァ、と思ったのです。